その後の食卓

アニメとかアニソンとかその他 ひとり酒

2019年 このアルバムが良かったですよ。

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2019年オタクの締めくくり、ベストアルバム編です。年越しました。おめでとう。
何か中途半端な選出ですが、勘弁してください。ディグ不足を言い訳にするのは格好悪いですが、それに尽きます。何故、謝罪から始めてしまうのか、自省終わり。巻いてこ巻いてこー。


・feather shuttles forever『図上のシーサイドタウン』
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今年初めにハマったアルバムがあったなーと思ったらこれでした。
2019年上半期は、期待してたアーティストのアルバムが割と肩透かしを食らって困ってたんですけど、これに出会って漸く「お、いいな」に至りました。ネットのオタクが大好きなレーベル『Local Visions』から発表された、ユニットの第2作です。
僕はこれで初めて知りましたが、かなり不思議な存在感です。すっとぼけたようなサウンドとローテンションなボーカルが、インディーらしさを漂わせます。ジャンルは何なんでしょう、ちょっと分からないです。
虚ろで少し不思議な世界観。言うほど病的ではないですが、ちょっと怖い…いや、そこまではない?いや、こわい。こういった感覚は初めてなもんで。


・ザ・リーサルウェポンズ『Back To The 80's』
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2019年で一番笑ったアルバムです。
流星のように現れて颯爽と話題をかっさらった彼らですが、これからも売れそうですね。キャラクターの強さとキャッチーでノスタルジーサウンド、そしてリリックのはしゃぎよう。誉めるところしかない。アルバム収録曲が矢継ぎ早にPV化されていて、少しでも気になったらアクセスしやすいのも美徳ですね。
曲調以上にコマーシャルは今風なのか。なるほど、書きながら納得しました。お上手。


平山笑美『PIRAMIRiSE』
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3千万円の歌声を持つ女性声優のファーストソロアルバムです。
本当に求められるものは求められることを証明してしまった一作だといえましょう。この成功は業界にとっても明るい話題ではないでしょうか。何が言いたいかというと、歌が上手い女性声優は皆クラウドファンディングをやってくれ、という話です(しもじとか、しもじとか、しもじとか…)。
さて、上記の通り本作はクラウドファンディングによって製作された一枚です。僕も漏れなく支援し、手に入れた訳ですが多少の心配もありました。一口入れた頃には既に目標金額を達成していたので、企画の頓挫ではなく内容そのものについてです。果たして、ぴらみさんの歌唱力が十二分に発揮される内容になるか、変に型に嵌まってしまわないか…とか。まあ、そんなんは聴いて風に吹かれた訳ですが。
想像以上にバラエティに富んだ作品です。これはブックレットのインタビューでもありましたが、「本人が歌いたい曲をまとめるのではなく、本人が歌うための曲を作りたい」という理念に基づいたプロダクトは功を成したと思います。結果的に我々が知らなかったぴらみさんの歌唱が出てくるし、どれもミスマッチを感じさせません。中でもキュートな歌唱で僕らを虜にした『Dead or ふたりきり♪』や、ラストの盛り上がりに向けてサウンド・リリック・歌唱の全てがリンクした『サインポスト』はマイフェイバリットです。これを書いている時点で2ndアルバム・ライブも決まったらしいので、次こそライブに参戦したいですね。つまり、次回は規模おっきくしてください。何卒。


・パソコン音楽クラブ『Night Flow』
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やはり彼らは凄いなぁと。そんな小学生みたいな感想を…と思われますが実際そう思います。
前作にあった懐かしさやノスタルジーは抑えられ、より現代的な内容に仕上がった印象です。古きガジェットを駆使する作曲集団というイメージが強かったですが、割とそつなくモダンな面も覗かせてくるので底が知れません。それにしたって、アルバム毎に必ずキラーチューンを残せることって才能ですよ。あと個人的には2019年、夜のランニングのお供ベストです。


夏川椎菜『ログライン』
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次に紹介するアルバムに出会わなかったら、こいつが声優アルバムのベストワンでした。おのれー。
というか、これを聴かずに2019年は終われません。楽曲派を自称する以上、必修科目です。先生、皆が聴くまで喋りません。
皆さんお馴染みTrySailの不憫担当…というより、他のふたりの個性が強すぎるのが問題で、この子も相当ヤバイです。
2018年に発表されたシングル『パレード』に驚かされたオタクは多かったはずです。私もそのひとりでした。バースデーシングルと銘打って、なんでそんなにネガティブな内容なのかとか、カップリングも明るくも意味ありげだし…
ナンスはこういう内向的な路線を目指すのかな、とその手のものにめっぽう弱い(=好き)僕はフルアルバムの出来上がりを待ち遠しく想っておりました。その裏で、「彼女はこういう想いを抱えていたのか…」と失望するファンがいたことも知っています。
そんな三者三様のオタクたちの想いを抱え、本作がリリースされました。例の『パレード』から『ステテクレバー』という流れでアルバムが始まります。後者もシニカルな内容で、それこそアイドル的な売り方をしてきた声優の曲だとしたら異端なものです。ああやっぱりと、僕らは同じ感想を、あるいは違った意味で抱いたことでしょう。しかし、このアルバムは僕らの想いを全て裏切ってきます。勿論、良い意味で。
内向的な彼女も、皮肉った彼女も、皆を応援してくれる彼女も、そこにいた訳です。様々な彼女がいるんですよ。だから、どれが正解ということがない。どれが本当の彼女だとか、その手のくだらない論争は『ファーストプロット』を以て終結します。
「いっぱいつまづいて歌になった デコボコな僕のストーリー」。最後に優しく総括されることの意味に、僕はぞくりとしました。彼女の描いたストーリーに、僕らは惑わされ続けたのだと。
これは決してネガティブを推したかった訳ではなく、こういう形もあることを先に提示したかったのでしょう。それが役者であり、アーティストでもある「夏川椎菜」の表現だったのです。
彼女は、彼女たちのような強い個性はないかもしれない。しかし、それは何色に染まることが出来るという強みでもあると、この作品が証明してしまった。彼女はこのアルバムで歌詞も手掛けていますが、それらは全て異なるメッセージです。小説家としての一面も持つ彼女は、それらを「作品」と線引き、伝えたかったのでしょう。
夏川椎名という「作品」。これはその第一節に過ぎません。彼女はこれからも様々な人物を演じ、歌っていくはずです。それは既に、半年を置かずに発表されたミニアルバム『Ep01』からも分かります。ジャケットに映る彼女は真っ白なパーカーを羽織り、真っ白な背景と共に何色ものペンキに染められています。まさに上記で語ったことを自らが表現しているようで、それを偶然だと片付けられないのです。
明確なタイトルのない「第一章」。
恐ろしい声優アーティストが生まれましたよ、これは。


伊藤美来『PopSkip』
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これは、これを初めて聴いたときにも言ったんですが、これを教えてくれなかった人は僕に謝ってください。
ナンスから引き続き、良い意味で裏切られました。
他方で行っているユニットから、普通に声優アイドルらしい曲ばっかなんだろ…と、思ってたら何処を切り取ってもPOPでPOPでPOP。やべー、どの曲もギターがかっこよくお洒落じゃん。はい、声優アーティストのアルバムベストです。
適当にお洒落なポップ歌わせとけば僕のようなキモオタが引っ掛かるやろなぁ…みたいな意図は少なからずあるかもですが、ちゃんと良くないとなびかないですよ。で、ちゃんとなびかせる内容だった。これが答えです。
まだ少女ぽさもありながら、確実に大人になっている、みっくのボーカルもアルバムの雰囲気に寄り添っていてグッドです。可愛くもあり、落ち着きもあり、彼女の成長の歩みがこの作品で分かります。こっからどう成長していくんですかねぇ。


サカナクション『834.194』
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まず初めに断っておくと、このアルバムで彼らを知りました。僕がメタルやハードコアパンクばかり聴いていた時代に彼らがいたのが悪いです。そりゃ、天の邪鬼になります。ごめんなさい。ということで、それなりに年を重ね、『忘れられないの』をYouTubeで知り、漸く辿り着くことが出来ました。これがサカナクションなんですね。…これが、サカナクションなのか。というくらい、びっくりのアルバムが晴れてベスト入りです。
『忘れられないの』や『新宝島』のような80年代シティポップからインスパイアされたような楽曲を期待していたので、2枚目には少し驚かされました。ちゃんとロックしている、という言い方も変ですが『さよならはエモーション』とか、対極的な激しさを伴うことが出来るんですね。アルバムタイトルは結成当初に根城にしていたライブハウスから、東京までの距離を表してるんですね。そう考えると2枚目の方が素の彼らのスタイルなのでしょう。その構成は、少しプログレバンドぽくてかっこいいです。


THA BLUE HERBTHA BLUE HERB
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ずーっと胸の中にあった、昨今のヒップホップ事情に対するアレコレがストンと落ちた気がします。
いや、ひとりでシコシコ聴いてた当時と比べると「最近テレビ観て、ラップ聴くようになったんすよ~」と言ってくれる人が増えてくれて、凄く嬉しいことなんですよ。でも、そういう人らと決定的に分かり合えない部分があって。その隔たりの詳細って非常に言いづらいんですが、バトルや即興性が褒められる時世って生き辛いんです。そういうリスナーばかりじゃないとは思いますが、僕らがラッパーに求めるものって何だっけ、と考えることもあって、そういうのが全てだっけ?とか思ったり。
もはや、僕みたいな人種はいるべきじゃない。当時と今のシーンが違うのって当たり前のことだし、そこで生き残るためにもがくラッパーたちからしても害悪なんです。
まー、そんな感じにクサクサしてた所にこのアルバムが耳元にやってきました。
それこそ「当時」を生きた伝説的なグループです。それが令和という時代に作品を出す、という意義。時代に併せてスタイルを変えていくベテラン(無論、こういうのもあるべき姿)がいる中で、彼らは相変わらず小細工なし。feat.曲もなし。しかも30曲2枚組、曲の平均時間も5~8分と、笑っちゃうくらい時代に逆らってる。
ILL-BOSSTINOの一言一句が染み渡るリリックと、O.N.Oの「明るい暗い」では表現できないビート。滅茶苦茶集中して聴かなきゃいけない…いや、聴かざるを得ないんですが、通しての聴き疲れはありません。むしろ、映画を見終わって一息つくような余韻です。こう書くと良くない表現でしょうが、盛り上がり過ぎないビートはかなり一躍買ってる。重めのテーマを前半にやりきって後半は比較的日常に寄り添っていたり、構成がしっかりしている点もベテランの手腕でしょう。「現在のヒップホップシーン」から「崩壊した家族の裏側にあった夫婦の想い」、そして彼らのキャリア。どの曲も彼らにしか歌えないテーマであって、彼らだからこそ説得力のある歌になる。こういう風に持ち上げられる姿こそ、嘗て彼らが宗教的と揶揄される所以だった訳ですが、もはや仕方ないでしょう。彼らがTBHで、TBHを続ける以上は他に代わりがないのだから。
こっちはこっちで勝手にやるから、そっちはそっちでよろしくやってくれ。
このアルバムがあるから、僕はそう思うことが出来ました。ありがとう。


以上です。こっちの方が下書きが結構残ってたので、割かし楽に書けた気がします。まあ、年越してしまいましたが。2020年はどうなるんでしょうね。少しでも貯金が増えると嬉しいです。あと、もうちょっと考えた行動がしたいです。
それでは。来年のベストでお会いしましょう。さようなら。